ウエハースの椅子 No.795

物事を全然別種の何かに美しく例えるのが非常に上手な人だ。例えが美しく響くと言うわけではなく、例えられた物と例えとの齟齬のな さが美しい。そう。絶望は誰とでも親しい友人なのだ。(04/08/02)

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江國 香織  1987年「草之丞の話」で小さな童話大賞を 、89年「409ラドクリフ」でフェミナ賞を受賞。小説として『こうばしい日々』(産経児童出版文化賞、坪田譲治文学賞)『きらきら ひかる』(紫式部文学賞)『ぼくの小鳥ちゃん』(路傍の石文学賞)『すいかの匂い』『神様のボート』『東京タワー』『泳ぐのに、安全 でも適切でもありません』(山本周五郎賞)『号泣する準備はできていた』(直木賞)など。

ハルキ文庫 え 2−1(角川春樹事務所) 文庫 2004年5月18日第1刷発行 495円+税 装幀 鈴木一誌 解説 金原瑞 人 2001年2月角川春樹事務所より単行本として刊行(bk1 amazon

恋人の身体(からだ)は、信じられないほど私を幸福にする。 新直木賞作家によるとても美し く切なく狂おしい恋愛長篇、遂に文庫化。 解説・金原瑞人(帯)

「私の恋人は完璧なかたちをしている。そして、彼の体は、私を信じられないほど幸福にすることができる。すべてのあと、私たちの体 はくたりと馴染んでくっついてしまう」――三十八歳の私は、画家。恋愛にどっぷり浸かっている。一人暮らしの私を訪ねてくるのは、や さしい恋人(妻と息子と娘がいる)とのら猫、そして記憶と絶望。完璧な恋のゆく果ては……。とても美しく切なく狂おしい恋愛長篇、遂 に文庫化。 (解説・金原瑞人)(裏表紙)

ウエハースで椅子を作ったとしたら、 それは、できたときから椅子としての運命を放棄している。あるいは、その運命は最初から耐えがたいものである。そんな平和な恋の話。 ところで、『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』『号泣する準備はでき ていた』とかって、タイトルだけで、もう、賞をあげたくなるような魅力がありますね。『ウエハースの椅子』にはそういう迫力はなく、 ひっそりそこにあるけど、目を離すことができない。そんな力のある言葉という気がします。


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2005/03/27更新