異邦人 fusion No.318
タイムスリップもの。『7回死んだ男』のように特異体質という設定ではなく、どういうわけか、(多分)一度きりタイムスリップに遭 遇してしまう。という設定。そのせいか、作中、タイム・パラドクスやパラレルワールドについて、検証が試みられて?いておもしろい 。(02/07/03)
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西澤 保彦 一九六十年高知県生まれ。米エカード大学創作 法専修卒。高知大学助手などを経て、執筆活動に入る。『聯殺(れんさつ)』が第一回鮎川哲也賞最 終候補作となる。一九九五年『解体諸因』でデビュー。本格ミステリとしての要素とSF的な設定を融合させた独自の作風で人気を博して いる。著書に『七回死んだ男』『麦酒の家の冒険』『幻惑密室』『依存』など多数。
集英社 単行本 2001年10月10日第1刷 1、600円 イラストレーション 森流一郎 ブックデザイン 鈴木成一デザイン 室
父が殺される。 23年前にタイムスリップした「わたし」に 父を助けることはできるのか?(帯)
あ。思わず低く呻いた。なんといことだ。迂闊にも、すっかり失念していた。 真っ先に思い当たらなければいけなかったのに。 ここ は西暦一九七七年の世界。昭和五十二年といえば、あの年。 父の永広啓介が、何者かに殺害された年だ。しかも、事件が起こったのは八 月。 今月のことではないか。(中略) いまから四日後に、さっき会ってきたばかりの父の遺体が発見されることになるのだ。………本 文より(帯)
こびとは西澤保彦好きでも、単発もの
は買わないようにしているらしいので、図書館で借りてきた。おもしろいなと思ったのは、やたらに、この事件(タイムスリップ)の合理
性と非合理性が作中のあちこちで論じられていること。##そして、終章、その考えを補強するかのように、主人
公の記憶が主観的に、つまり、本人にはっきりそれとはわからないようなあいまいな形で修正されてゆく様子が、読者にはわかる
。##という手法がまた、おもしろかった。『七回死んだ男』とどうしても比べて考えてしまうが、比べるのもおもしろいから、ま
ーいーかな。あちらは、事件が終わっても、状況は変わらないが、こちらは、事件の終了と、状況の変化(というか修正)がほぼ同時だ。
『七回…』では、その体質がどうやら時間の流れに受け入れられているのか、主人公がどんどん、本流を作り変えてゆくようだが、『異邦
人』では、##過去の紙にメモをとることすらできない。(ただし、飲み食いはできる。それも考えて見れば不思
議だ)そして、この旅は、『過去の修正』への旅なのだ。体質として、タイムスリップする(というか、一日を繰り返してしまう)のでは
なく、使命を持たされて派遣される。何に?##だろう。そこが、物語が終わっても、解けない謎だ。バック・トゥ・ザ・フューチ
ャーが好きなので、この手のは、たいてい楽しんでしまうので、過大評価かもしれないけど、神経症的にまでこまかい設定や、##あまりにも、ハリウッドご都合主義的に、主人公にとってやたら、ハッピーなエンディング##なのも、気に入っ
てる。☆を一杯つけたいが、人に薦めるとなるとどうか。ちょっと説明的な部分が多いような気もする。そこもまたおもしろいんだけど
。
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2004/09/12更新