山頭火さんとうか うしろ姿の殺人 No.680

山頭火の謎と現実の事件の謎を同時に追う設定。最初は現実より山頭火の謎に重点が置かれているようだが、それが解けるにつれ、現実 の事件もほどけてゆく。というか、ほつれてゆく。その辺りのバランスがうまいなぁ。謎としては、まぁ、現実の事件の謎より山頭火の謎 の方がおもしろかったな。作中、国電が走っているのだ。でも、まだ十分おもしろい。(03/11/19)

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日下 圭介

長編推理小説 書下ろし カッパ・ノベルス(光文社) 新書 昭和61年4月25日初版1刷 689円 カバー・デザイン 辰巳四 郎 カバー印刷 慶昌堂印刷 本文イラストレーション 辰巳四郎 解説 武蔵野次郎

俳人山頭火(さんとうか)には、以前から興味を抱いていた。名誉や富から縁を断ち、家族をも 捨て、足の向くまま放浪の旅を重ね、酒と親しむ。そうした生きざまを、うらやましいと思うことがあった。 だが、山頭火の手記や資料 を、ミステリー作家の意地悪な目で読んでみて不思議な思いがした。奇妙な謎が、いくつか散見できたからである。その謎をつなぎ合わせ てみると、ひとつのストーリーが自然に浮かび上がって来たのだ……。 「著者のことば」(見返し)

うしろ姿のしぐれてゆくか=\―漂泊(ひょうはく)の俳人種田山頭火(たねださんとうか)を研究していた老作家菱村忍(ひしむらしのぶ)が殺さ れた。しかも、厳重に保管された忍の遺稿の文字が消されていた! さらに、ただ一人遺稿の内容を知る編集者飯塚真奈枝(いいづかまなえ)の失踪。遺稿に秘められた山頭火の謎とは? 真奈枝の同僚岬恵津子(みさきえつこ)は恋人の瀬島夏雄(せじまなつお)、新聞記者野尻俊作(のじりしゅんさく)らと一連の謎を追う。しかし真奈枝は死体となって中国路で発見された! 彼女の遺 品に残されたオニシ≠フ文字の意味は? 恵津子は、真奈枝の、そして山頭火の足跡(そくせき )を迫って中国路へ。……。しかしそこには恐るべき罠が……!? 有名な山頭火の秘密とミステリーの醍醐味とを見事に融合させ た、渾身(こんしん)の書下ろし秀作!(裏表紙見返し)

絢爛(けんらん)たる文学史ミステリーの秀作 評論家 武蔵野次郎(むさしのじろう) 日下(くさか)作品に一貫している作風は、ひじょうに よく考えられたストーリー展開であり、その絢爛たる小説技法には凝(こ)った面白さ(つまりよく 練られたストーリー展開の妙味)が溢(あふ)れており、読者をして巻を措(お)かせぬ魅力に満ちているといってよいだろう。技巧派の作家として秀逸(しゅう いつ)な才能の持ち主なのである。 本編を一読して読者は本編のストーリー構成が複層的な設定になっていることに目をひかれる のである。すなわち、俳人種田山頭火(たねださんとうか)に関わる話の面白さ、そして、それに並 行して本編のミステリーとしての物語がくりひろげられてゆくという二重構造の興味である。そこが本編の何よりの面白さになっているよ うである。 本編はそういう秀逸な文学史ミステリーとして成功しているのである。(裏表紙)

山頭火をめぐるミステリーはすばらし い。というか、これが本当じゃないの?と疑いたくなる。##あとから、やっぱり、山頭火は一人しかいない。と いう結論に登場人物が達するが、その方が、ちょっと節が弱いような、納得しきれない感じ。##おもしろいなぁ。っと、それにく らべると、現実に進行している事件の方は、山頭火の謎解きほどに興趣がないような。単独であればまた別の感想かもしれないけど、謎が 複次的な場合、バランスの問題なだけなんだけど、片方がおもしろいと、もう片方も同じくらいのおもしろさを期待してしまうからなぁ。 うーん。bk1、Amazonとも表紙画像なし。


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2004/11/07更新